女子大小路の名探偵

岐阜市 柴橋正直市長

シビックプライドを醸成

岐阜市民がもつ温かな人柄を
小説を通じて届けたい

3人の対談

左から秦建日子氏、柴橋正直岐阜市長、中広常務取締役・大島斉

対談日:2020年11月30日

<大島>
秦さんの素晴らしい感性を、岐阜市がキーワードとする「シビックプライド」に生かせるのではないかと話すなかで、岐阜市の地名や行事の名称をそのまま使用するサスペンス小説の連載が案としてあがりました。

<柴橋>
この街が舞台となり、岐阜市民として大変うれしいです。

<大島>
地元のみなさんに読んでいただきたく、家庭に届く『地域みっちゃく生活情報誌®』に掲載しています。連載が始まったところでコロナ禍となりました。文化や芸術は、いわゆる「不要不急」と言われてしまいましたが、本当に人生から消えてしまうと寂しいものです。エンタメ力で何かできないかと考え、リーディングコンテンツに挑戦しました。すべてリモートで収録し、秦さんが編集しています。

<柴橋>
リーディングコンテンツで主人公・広中美桜を演じる矢方美紀さんも、今日お二人にお越しいただいた「みんなの森 ぎふメディアコスモス」で講演をしてもらいました。

<大島>
矢方さんは、もともと秦さんの舞台に出ていたんですよね。

<秦>
そうです。いま声優をしていると聞いて最初に声をかけました。
『女子大小路の名探偵』は姉と弟の話です。二人の実家は岐阜市。姉・美桜は柳ケ瀬の店で働き、弟・大夏は名古屋に出て女子大小路にいます。

<柴橋>
実際、若い人は岐阜市から名古屋市に出ていきます。でも、実はいま30代、40代が岐阜に帰ってきているんですよ。仕事や家庭のこと、親の健康のことで地元に戻っていて、そのあたりの「あぁ、そうだよね」っていうことが絶妙に書かれています。読んでいて、「自分のことかな?」と思う読者は多いんじゃないでしょうか。

<大島>
秦さんが、小説の中で岐阜市を舞台にした理由は。

<秦>
岐阜県で映画『ブルーヘブンを君に』を撮り、岐阜のすばらしさは2時間の映画で語りつくせないと思いました。地方創生や地域貢献を目的にした小説って、いままでにない新しい形で、さらにフリーマガジン連載という新しい方法でできる!と決定しました。1年間地元で連載して、みなさんに認知してもらったら今度は単行本として全国で発売します。「玉宮」、「長良川温泉」と聞いてもピンとはこない全国のみなさんが、小説を読んで「行ってみようかな、美味しい水なら飲んでみようかな」となるようにしたいんです。その先、映像化されたら、何度も楽しめるコンテンツになると期待しています。

ぎふメディアコスモス見学

みんなの森 ぎふメディアコスモスを見学。
幅広い世代が本を通じて交流できる構成に感動しました

<柴橋>
岐阜市はロケツーリズム推進室を設置して、映画の撮影などを歓迎しています。2020年の4月から始めましたが、コロナ直撃で力を発揮できていません。今回のように岐阜の街をいろいろなコンテンツで舞台にしてもらいたいです。

<大島>
リーディングコンテンツを始める際、「フルリモートでできるだろうか」と話し合いました。でも、「とりあえず挑戦することに意味がある」とスタートしています。連載が終わったら単行本になり、全国へと広がります。ぜひシビックプライドの醸成につなげてほしいですね。

<柴橋>
続きが楽しみ。なぜ、主人公の彼はこんなにもトラブルに巻き込まれるのだろうと、興味がわきますよね。

<秦>
弟と姉、それぞれの温かい思いを表現できるストーリーにしたいです。

<大島>
秦さんの小説は岐阜人気質をよくわかっているな、って感じます。

<柴橋>
岐阜市民は、温かい人が多いですからね。

佐野享吾役を演じるRYUREXさん

せっかくなので小説の舞台となった玉宮地区を市長と散策。
岐阜の街づくりをリードし、リーディングコンテンツでは佐野亨吾役を演じる
MEGARYUのRYUREXさん(左から2番目)や、
世界のタマミヤプロジェクトの黒木諭会長(一番左)も集まってくれました

神田町にあるメガネ・補聴器の千賀は大正5年創業。
新岐阜駅前商店街振興組合の会長千賀英治会長(一番左)とも
昔話に花が咲きます。「時計を直してもらいました」と市長も笑顔です

玉宮地区に由来した店名を掲げる「たんまみ屋」

岐阜駅北地区暴力団排除推進協議会の横枕秀夫会長(一番左)も合流し、
玉宮地区の魅力を話しながら散策

富士屋デパート

古くから営業する店舗や富士屋デパートの歴史を
聞きながら玉宮地区を市長とともに歩きました

<大島>
小説には「玉宮」や「柳ケ瀬」、旅館「十八楼」も出てきます。市長には、思い入れのある場所はありますか。

<柴橋>
「長良川」は、どの市民にとっても重要なキーワードで心にしみついています。校歌に必ず入っているので、10代からしょっちゅう歌っています。私の母校でも1番の最初に出てきますよ。高校時代は、忠節橋を渡って長良川を眺めながら通学していました。毎日の風景のなかに金華山や長良川があったんです。岐阜市の街が変化して路面電車がなくなるなどはあっても、金華山、長良川、橋の姿は変わりません。岐阜市民の日常生活は長良川と密接にかかわっていて、それぞれの長良川があるんです。

<秦>
映画を撮ったときに岐阜ダイハツの社長さんが、岐阜といえば「長良川の鵜飼」だと鵜飼観覧に招待してくれました。「『この風景も紹介してくれたらうれしいな』と、岐阜の人間として思う」と話されていたのが印象に残っています。

<柴橋>
2020年は、鵜飼開きに観覧船を出せない前代未聞の年でした。苦しみと葛藤がありましたね。鵜飼の時期なのに観覧船がないとなると、市民としては違和感を覚えます。「この季節の長良川といえば…」が我々にはありますから。長良川の花火もなくなりましたが、有志のみなさんが打ち上げてくれました。それにどれだけの人が喜びを感じたことか。

<大島>
2019年の鵜飼開きは、秦さんとご一緒しました。2020年は観覧船が中止となって、いかに特別な時間であったのかと身にしみました。鵜飼のように岐阜市の魅力という点で、今後PRされたい事業はありますか。

<柴橋>
小説の舞台である柳ケ瀬について、岐阜市は「再開発」「リノベーション」という切り口があります。かつてはにぎわっていた公園や道路も、人口減少によって人が集まらない、通らないとなっています。そういったパブリックスペースを次の時代にむけて、どうリノベーションしていくか。金(こがね)公園でマルシェをしたりハンモックで子どもがくつろいだりと、実証実験をしました。高島屋前付近では「柳ケ瀬パークライン2020」として金華橋通りを規制して遊具を置いたり、スケボーをしたり音楽演奏したり、小型モビリティで楽しんだり、ドリンク飲んだり…。道路で市民生活をしてみました。2022年度に完成する高島屋南側の「柳ケ瀬グラッスル35」の再開発にあわせて金公園のリニューアルも完成させたい。2022年度は岐阜市にとって大きな盛り上がりの年となります。かつてとはまた違った意味の価値や魅力ができます。

長良川も変化していきますよ。鵜飼観覧自体、多様化していきたいですね。長良川右岸の旅館が並ぶ長良川プロムナードに桟敷を設置して、夜市を開きました。観覧船からではなく、河畔から鵜飼を楽しむ新しい方法です。野外ステージをつくり、鵜飼が始まるまでの時間に音楽を楽しんだりしました。

岐阜市は変わろうとしています。私たちが培ってきた長良川文化を新しい時代の、新しい形で楽しんでもらえるものにしていきたい。柳ケ瀬が変わる、長良川が変わる、駅周辺も変わる、玉宮も安心して楽しんでもらえる場所に。岐阜市を動かすのが、私のテーマです。

ぎふメディアコスモスのテラスでは、金華山を臨みながら読書も出来ます

<大島>
岐阜市が「変わろう」としているのを感じます。舞台監督としても有名な秦さんとコラボできると面白いですね。
『女子大小路の名探偵』に期待されることはありますか。

<柴橋>
小説のなかに岐阜市の具体的な場所や、市民、県民が誇りに思っていることが具体的に出てくるのは、シビックプライドをもっともっと高めるのにつながります。メディアコスモスをシビックプライドゲートウェイ(入口)にしたい。メディアコスモスに来て、メディアコスモスで得た情報から柳ケ瀬に行ったり岐阜城に行ったり、地域で活躍する人を知ったりしてほしいです。小説にメディアコスモスを登場させてもらって、岐阜市に対する思いを得るきっかけになるといいな。

<秦>
メディアコスモスは非常に素晴らしい施設。できるなら、ここで小説の続きを書きたいと感じるほどでした。小説は後半に入りました。この連載を通じて、市民のみなさんにシビックプライドをより感じてもらうお手伝いができるよう、がんばります!

 

今回の対談場所/みんなの森 ぎふメディアコスモス https://g-mediacosmos.jp/
オシャレな外観に岐阜の空が映えていました!